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高齢者における熱中症予防の注意点

最終更新: 4月22日

まずは下の図を見てください。

図:熱中症による救急搬送数(5~9月)と年齢別割合([1]より引用)


高齢者は、その生理学的特徴などから熱中症を生じやすく、重症化しやすいため、後遺症の発生も多くなります[1]。上の図の通り、平成27年度には、熱中症により55,852人が救急搬送され、そのうち高齢者が28,038人(50.2%)と過半数を占め、また平成30年度には夏期に95,137人の熱中症の救急搬送件数があり、そのうち高齢者が45,781人(48.1%)となるなど、高齢者の熱中症罹患数が増加しています[2]。


高齢者は年齢が上がると基礎代謝が低下してくるので、同じ気温でも若年者と比較して寒く感じる傾向にあります。そのため夏期の暑熱環境でも長くその場に留まることになり、結果として発生率の上昇や重症化につながります。さらに、加齢に伴う体内水分量の低下、発汗機能の衰え、心機能の低下はどれも体温上昇を引き起こしやすいとされます。


また近年あきらかとなっている社会的問題としては貧困化、孤立化で屋外活動の機会がなくなり熱順化が進まないため、屋外での熱中症リスクが上がったり、また、自宅で熱中症に罹患したとしても、日常的な他者との交流がないと発見が遅れ、重症化するなどのリスクがあります。そのような状況から熱中症予防ための行動は高齢者個々人の判断に大きく左右されるため、熱中症対策が届きにくいという側面もあります。


高齢者における熱中症の発生はこれまでの報告でエアコンの停止中におきることが多く、また重症化や死亡割合、集中治療室に入室する割合が多くなり、後遺症や合併症を併発することが多くなります[4]。これにより入院や通院が長期にわたり、社会的に大きな損失を被るとされ、今後さらなる温暖化や高齢化により深刻な社会問題となる可能性が高いと思われます。


予防はもちろん、適切な水分補給とエアコンです。「適切な」とはいいかえれば「こまめに・意識して・少量ずつ」水分を飲んでください。高齢者は口渇中枢が鈍感になっていることがあり、喉が渇いたと感じていなくても、脱水が進行していることがあるので、注意が必要です。また、熱中症は暑熱環境でなければ起こりえませんので、エアコンによる温度・湿度のコントロールは、究極の予防薬です。夏場は必ずエアコンを使ってください。

社会全体としては、最も熱中症にかかりやすく重症化しやすい、高齢者への積極的な啓発や予防運動をいかに効率的に行っていくかに焦点を当てるべきでしょう。この点、地域行政の積極的なアプローチは、周辺住民との社会性を保つことで、小さな体調不良を早期に発見し軽症のうちに医療にアクセスできるため、高齢者のセーフティーネットとしても非常に有効であると思われます。また、高齢者の熱中症による受診は、軽症、重症を問わず、住環境の確認や、医師による予防の指導、ソーシャルワーカーなどを通した環境整備や再発防止のケアプランの作成など、きめ細かい配慮を行うことで、今後の再発や重症化を防ぐことにつながる可能性があると思われます。



[1] 環境省 熱中症予防情報サイト http://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_1-3.pdf

[2] 三宅康史 高齢者の熱中症、低体温症の諸問題. Geriatric Medicine. 2018;56:943-9. [3] 総務省消防庁 平成30年度の熱中症に よる救急搬送状況 平成30年11月

[4] 三宅康史, 他(2014)「熱中症の実態調査 日本救急医学会Heatstroke STUDY2012最終報告」


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