Critical Care誌で論文が出版されました
- Hespen

- 3月20日
- 読了時間: 4分
熱中症でみられる「けいれん」は、必ずしも単純な重症サインとは限らない可能性があります
このたび、私たちの研究論文 “Early seizures and heterogeneity of physiologic recovery in heat-related illness: a nationwide registry study” が、集中治療医学分野の国際誌 Critical Care に掲載されました。
今回の研究では、日本救急医学会の全国レジストリ JAAM-HsS のデータを用いて、熱中症・暑熱関連疾患で入院した患者さんのうち、病気の早い段階で全身けいれんを認めた方に、どのような特徴があるのかを調べました。対象は2017年から2024年に登録された成人入院患者 3,859人 で、そのうち 408人、10.6% に早期けいれんが認められました。
熱中症の「けいれん」は、これまで重症サインと考えられてきました
重症の熱中症では、意識障害やけいれんなどの神経症状がみられることがあります。一般的に、けいれんは脳への強いダメージを示す危険なサインとして捉えられてきました。
もちろん、熱中症でけいれんを起こすことは軽視できません。すぐに冷却や救急対応が必要な重要な症状です。
一方で、実際の救急現場では、けいれんを起こした患者さんが必ずしも全員、不可逆的な脳障害や非常に悪い経過をたどるわけではありません。そこで本研究では、「早期けいれんがある患者さんでは、その後の体の回復パターンに違いがあるのか」に注目しました。
入院1日目から2日目の体の変化を調べました
本研究では、入院時と翌日の検査値を比較し、体の中で起きている変化を詳しく調べました。
特に注目したのは、乳酸、base excess、血糖、ナトリウム、BUNなど、脱水、循環、代謝、電解質バランスを反映する検査項目です。
その結果、早期けいれんを認めた患者さんでは、入院時には体温や乳酸が高く、base excessが低いなど、初期の体への負担が大きい一方で、翌日にかけて乳酸、base excess、血糖、ナトリウムなどがより大きく改善する傾向がみられました。
つまり、早期けいれんを認めた患者さんの中には、初期には強いストレス反応を示しながらも、短期間で代謝や電解質のバランスが改善していく一群が存在する可能性が示されました。
「けいれん=必ず悪い経過」とは限らない可能性
今回の研究で大切なのは、熱中症における早期けいれんを、単純に「重症だから悪い」という一方向のサインとしてだけ捉えるのではなく、患者さんごとの体の反応性や回復過程の違いを示す手がかりとして考える必要がある、という点です。
本研究では、早期けいれんを認めた患者さんの院内死亡率は 6.6%、けいれんを認めなかった患者さんでは 5.2% でした。さらに年齢や体温、血圧、乳酸などを調整した解析では、早期けいれんと死亡との関係は単純ではなく、調整後には死亡と逆方向の関連も観察されました。
ただし、これは「けいれんがある方が良い」という意味ではありません。
この結果には、年齢差、発見や記録のされやすさ、治療の早さ、非常に重篤な患者ではけいれんが記録されにくい可能性など、さまざまな要因が影響していると考えられます。そのため、本研究ではこの死亡との関連を、あくまで観察研究における二次的な結果として慎重に解釈しています。
熱中症にはさまざまな回復パターンがあります
熱中症は、単に「体温が高い病気」ではありません。
高温環境にさらされることで、脱水、循環不全、電解質異常、代謝異常、腎障害、肝障害、凝固異常など、全身にさまざまな変化が起こります。
今回の研究は、同じ熱中症・暑熱関連疾患であっても、患者さんによって初期の体の反応や回復の仕方が異なることを示しています。
つまり、熱中症の重症度を判断する際には、入院時の症状だけでなく、その後の短期間の変化をあわせて見ることが重要です。
今回の研究が伝えたいこと
本研究のメッセージは、熱中症でけいれんを認めた場合に「必ず予後が悪い」と決めつけるのではなく、早期の冷却、全身管理、検査値の推移を踏まえて、患者さんごとの状態を丁寧に評価する必要があるということです。
一方で、けいれんは熱中症における重要な救急症状であり、現場でけいれん、意識障害、高体温がみられる場合には、ためらわず救急要請が必要です。
この研究は、熱中症の診療において、患者さんの「初期の重症度」だけでなく、「どのように回復していくか」という視点を加えるものです。
Stay Cool Save Life
私たちは、熱中症だけでなく、その背後にある暑さによる健康被害にも注目しています。
暑さによる影響は、当日だけで終わるとは限りません。脱水、腎障害、循環負荷、食欲低下、睡眠障害などが数日間持ち越され、体調悪化や入院につながることがあります。
だからこそ、暑くなってから対応するのではなく、暑さを避けることそのものが大切です。
Stay Cool Save Life.涼しく過ごすことが、命を守ることにつながります。




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