Science Report誌で論文が出版されました
- Hespen

- 1月26日
- 読了時間: 3分
持病のある方は、熱中症が重症化しやすい可能性があります
このたび、私たちの研究論文 “Impact of symptomatic comorbidities on heatstroke outcomes: A retrospective nationwide cohort study” が、Nature Portfolioのオープンアクセス誌 Scientific Reports に掲載されました。
今回の研究では、日本救急医学会の全国レジストリデータを用いて、熱中症で入院した患者さんにおいて、持病が予後にどのように関係するのかを調べました。
暑さによる健康被害は、熱中症だけではありません
近年、猛暑や熱波による健康被害が世界的に問題になっています。熱中症はその代表的な病気ですが、暑さによる影響は「体温が上がること」だけでは説明できません。
高温環境にさらされると、体の中では脱水、循環への負担、腎臓への血流低下、呼吸状態の悪化などが起こります。特に、もともと心臓・肺・腎臓・糖尿病などの持病がある方では、暑さによる負担が加わることで、体調が大きく崩れる可能性があります。
この研究では、まさにこの点に注目しました。
全国2,373人の熱中症入院患者さんを解析
本研究では、2017年から2021年に日本国内の複数施設で登録された、成人の熱中症・暑熱関連疾患の入院患者さん 2,373人 を対象に解析しました。そのうち 608人、25.6% に少なくとも1つの持病がありました。
持病として評価したのは、心血管疾患、呼吸器疾患、腎疾患、肝疾患、糖尿病、免疫不全、精神疾患などです。これらは単なる過去の病歴ではなく、入院時点で治療中または症状を伴う状態として評価されました。
持病がある人では、死亡率が高い結果に
解析の結果、持病がある患者さんでは、持病がない患者さんに比べて院内死亡率が高いことがわかりました。
具体的には、院内死亡率は、
持病あり:15.3%
持病なし:10.9%
でした。
また、持病がある患者さんでは、入院期間も長くなる傾向がありました。これは、熱中症が単独で完結する病気ではなく、もともとの体の弱い部分に負担をかける病気であることを示しています。
特に呼吸器疾患が重要でした
今回の研究で特に重要だったのは、呼吸器疾患を持つ患者さんで死亡リスクが高かったことです。
年齢、性別、BMI、来院時体温、血圧などを調整した解析でも、呼吸器疾患は院内死亡と有意に関連しており、調整オッズ比は 2.93 でした。
呼吸器疾患がある方では、暑さによる脱水や循環負荷に加えて、呼吸そのものへの負担が重なります。暑い環境では体温を下げるために心臓や肺に負担がかかるため、もともと呼吸機能に余裕が少ない方では、熱中症がより重い状態につながりやすい可能性があります。
「持病のある人は暑さを避ける」が重要
この研究からわかることは、熱中症対策は「水分をとる」「涼しい場所に行く」だけでは不十分な場合がある、ということです。
特に持病のある方では、暑さによって体調が悪化してから対応するのではなく、暑さを避けることそのものが治療に近い予防行動になります。
私たちは、暑熱関連死の啓発活動に加えて、持病のある方に対して “Stay Cool Save Life” を呼びかけています。
これは、「涼しく過ごすことが、命を守ることにつながる」というメッセージです。
暑さを我慢することは、美徳ではありません。特に持病がある方にとっては、暑さを避けることが、入院や命に関わる状態を防ぐための大切な行動です。
今後に向けて
今回の研究は、熱中症の重症化を考えるうえで、持病の影響をより具体的に示したものです。特に呼吸器疾患を持つ方では、熱中症発症後の予後に注意が必要であり、早めの予防と周囲のサポートが重要です。
今後も私たちは、熱中症だけでなく、その背後にある「見えにくい暑さの健康被害」に注目し、暑熱関連死を減らすための啓発と研究を続けていきます。
Stay Cool Save Life.涼しく過ごして、命を守りましょう。




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